(SE)波の音。ザザー。ザザー。以後、オープニングまで薄く続く。
OP前セリフ
皆本大祐「ぼくは、夏になるたびカマクラを想いだす……」
タイトルNA(朝比奈響子)インタラクティブドラマ

第8話 ダイヤモンドよ永遠に

オープニングBGM

※リアルタイムシーン
(SE)教習所のコースの環境音。セミの声。そよ風。車の走る音。ブウウウウ。

NA(皆本大祐)その日、ぼくは、ひさしぶりに響子さんの教習を受けていた。そろそろ第一段階もしあげの教習だ。
みきわめ修了の判定をもらえれば、いよいよ仮免試験だ。やっと晴れてどうどうと路上で運転できるかも?


朝比奈響子「(さっきからずっと呼んでいるらしい)ね、皆本くん?皆本くんってば!」
大祐「は、はい?」
響子「(冷静)注意力散漫。減点と。あーあ、みきわめ修了はまだ早いかな」
大祐「あ、あの、響子さん、実はきゅ、急にお腹がいたくなって。
あと、夏かぜを こじらせて、熱が39度もあるんです。さっきから幻覚も だ、だから」
響子「(冷静)仮病を言い訳にする性癖あり。減点と」
大祐「あ、あの響子さんお願いしますよー」
響子「(冷静)すぐひとに頼ろうとする。減点と」
大祐「あの響子さん?キャラ変わってません?」
響子「(まじめに)皆本くん?」
大祐「(きりっと)はい!なんでしょうか?朝比奈教官?」
響子「ずいぶん運転技能は向上したわ。このまま、路上に出ても問題ないと思う。
この短期間にここまで上達するひとは珍しいわね」
大祐「えー?ほんとですか?ありがとうございます!」
響子「ところで皆本くん?」
大祐「はい!なんでしょうか?」
響子「最近、理恵の元気がないみたいなんだけど。皆本くん、なにかこころあたり ないかしら?」
大祐「え?響子さんもですか?実は、ぼくも少し気になってたんですよね」

※回想シーン1
NA(皆本大祐)それは、一昨日のことだった。
(SE)教習所のロビー。環境音。
朝比奈源太郎「そこの若い衆!皆本大祐といったかの?」
大祐「あ、源じいさん!おはようございます!」
源太郎「うむ。おはよう。ところで、おぬしに頼みがあるのじゃが」
大祐「え?ぼくにですか?」 源太郎「聞いてくれるかの?」
大祐「ぼくにできることでしたら」
源太郎「もちろんじゃ。簡単なことじゃよ」
大祐「なんでしょうか?」
源太郎「響子をもらって、朝比奈家を継いでくれんかの?」
大祐「なあんだ!そんなことですか。おやすい御用です! 響子さんをもらって、朝比奈家を継げばへ?」
源太郎「おお!よくぞ決心してくれたの!これでわしも晴れてシングル独身ライフ生活をエンジョイ できるというものじゃ!」
大祐「あ、あのー源じいさん?」
源太郎「なんじゃ?」
大祐「ぼく、まだ学生だし、未成年だし、生活力ないし」
源太郎「なんじゃ?響子では不服と申すのか?」
大祐「い、いえ。響子さん、すっごいきれいだし、しっかりしてるし、もう理想の女性 だと思います!」
源太郎「そうじゃろ?じゃ、決まりじゃな!
(独白)これで、あの口うるさい孫から 解放されるというものじゃ!わしの青春を取り戻すのじゃ!ほほほほ」
大祐「あのー、源じいさん、ご自分がなに言ってるか、わかってます? だいいち、響子さんの気持ちは聞いたんですか?」
源太郎「そんなこと聞けるはずがなかろうて!おぬしも怖いもの知らずじゃのー?」
大祐「へ?」 源太郎「(思い出すように)昔は可愛いまごじゃった」

NA(皆本大祐)そして時は17年前に遡る。
※回想シーン2
夏、七里ガ浜の砂浜のどこか、打ち寄せる波の音。風の音。かもめの声。

4歳の響子「おじいちゃーん!」
源太郎「おお響子!こっちへおいで」
(SE)砂浜を走る響子(4歳)の足音。
4歳の響子「うん!おじいちゃん!ね、今日はおともだちができたんだ!」
源太郎「そうか、それはよかったの」
4歳の響子「うん!由里ちゃんていうの!あたしと仲良くしてくれたんだ!」
源太郎「由里ちゃんか。可愛い名前じゃ。今度おじいちゃんに紹介してくれるかの?」
4歳の響子「うん! ね、ね、おじいちゃん!わたし、自分からお話しかけたのはじめてだったの!
そしたら、由里ちゃんね、すぐにおともだちになってくれたんだ! すっごくうれしかったんだ!
それでね、二人でなぞなぞ出して遊んだの!すっごく楽しかったんだ!」
※回想シーン2おわり

源太郎「(懐かしむように)あのころの響子は本当に可愛かったのう」
大祐「ふーん。由里さんと響子さんは幼なじみだったんですか」
源太郎「やはり、響子の気持ちを確かめねばならんのかの?」
大祐「なんの話ですか?」
源太郎「おぬしを婿に迎える気持ちがあるかどうかじゃ!」
大祐「あ、当たり前じゃないですかー!
たとえぼくがどんなに嬉しくたって、 響子さんの気持ちをきかずにそんな話をすすめるわけには。
あ!そ、そうだ!それに響子さん、高そうなダイヤモンドのリングはめてるじゃ ないですか!
あれ、カレシとかに贈ってもらったんじゃ」

(SE)ヒールの音。
由里「めずらしいね!皆本くん、源じいと立ち話なんて。なんだか嬉しそうな顔 しちゃって。なに話してんの?」
大祐「ゆ、由里さん?」
源太郎「なにって、皆本大祐に、響子をもらって朝比奈家を継いでもらえんかと」
大祐「(会話を妨害)わーーーーーーーーーーーー」
由里「どしたの?皆本くん?急に大声だしたりして」
大祐「きょ、今日は本当にいいお天気ですねえ! あんまりお天気がいいんでびっくりしちゃった!」
由里「なら朝起きてすぐびっくりしなよ!なあんでいまごろ」
大祐「あ、あの!あ、そうだ!ね!由里さん、明日の予約しようと思って受付に来た んですけど、理恵ちゃん知りません?」
由里「理恵?そいえば、朝から見かけないねー」
源太郎「そうじゃ!わしも理恵ちゃんをデートに誘おうと思って、ここに寄った んじゃった。
皆本大祐と立ち話してる場合じゃなかったのじゃ!」
由里「源じい!」
※ 回想シーン1おわり

NA(皆本大祐)そして、理恵ちゃんは昨日も教習所のバイトを休んだ。
(SE)教習車が走るエンジン音。ブウウウウウウ。
大祐「それにしても、理恵ちゃん、いったいどうしたんだろ?」
響子「(耳うちする)ね、皆本くん?もしかしてそこに話をつなげるための回想シーン だったの?
おとといから17年前に遡って、またおとといにもどって」
大祐「(耳うちする)今回は、追憶がテーマらしいんですよ」
響子「(なにごともなかったように)えーと。そういえば、この前ごはん食べにいった ときも、
食欲がないとか言ってたわね、 あのコ」
大祐「学校も休んでるんでしょうか?」
響子「夏休みだけど部活とか休んでるかもしれないわね。由里に聞いてみましょう か?」
大祐「え?由里さん、理恵ちゃんの学校のこと、なにか知ってるんですか?」
響子「え?由里、いつも理恵といっしょだから」
大祐「へ?」
響子「あ、ごめんなさい。由里、皆本くんに何も話してないのね?
じゃ、今のわたしの 話、聞かなかったことにして。ね、お願い」
大祐「え?は、はい。わかりました。(独白)なんだろ?気になるなー」

(SE)大祐のセリフの背後で、由里に電話をする響子。
響子「(由里に電話してる)あ、もしもし?由里?」
由里「(電話の声)ああ、響子?なに?」
響子「ね、理恵、どこにいるか知らない?」
由里「(電話の声)さっきまでロビーにいたよ」
響子「最近、理恵、元気ないみたいなんだけど。由里、なにか聞いてる?」
由里「(電話の声)ああ、あのコ、安達くんっていう稲村ガ崎高校の卒業生に片思いして るんだよ。
七里ガ浜でよくサーフィンやってる男の子。中学の先輩なんだって」
響子「ふーん。片思いか」
由里「(電話の声)その安達くんがね、9月からアメリカに留学しちゃうんだって。
それで、もうすぐカマクラからいなくなっちゃうんだよ」
響子「ふーん。そうなの。藤原くんのときみたいね」
由里「(ため息)はあー」
響子「どうしたの?由里?」
由里「(電話の声)ちょっと思い出しちゃった」
響子「あ、ごめんなさい。余計なこと言って」
(由里と響子の主観チェンジ)
由里「ううん。いいんだよ。もう昔のことだもん。それよりさ、理恵のこと元気 づけてあげよっか?」
響子「(電話の声)わたしも今、同じことを考えていたの。だから由里、もし、また理恵 を見かけたらすぐに教えてね」
由里「了解!響子もね!」

(SE)電話の切る音。ピッ。サンダルを引きずるような音。
朝比奈源太郎「おお!北条由里。ちょうどいいところにおった!」
由里「どしたの?源じい?」
源太郎「理恵ちゃん知らんか?デナーに誘おうと思っての?」
由里「(怒ってる)あーのーねー!」
源太郎「こ、怖いのう。北条由里も昔は可愛かったにの」

NA(皆本大祐)そしてときは10年前に遡る。
源じいさんによれば、由里さんと響子さんは、小学生のころカートレースのライバル同士だったとか。


※回想シーン3
(SE)サーキット場。スタート前のカートのエンジンの音。バオオン!バオオオン!

小5の響子「(声張り気味)ね!おじいちゃん、わたしが優勝したら、お出かけ用の ドレス買ってくれるのよね?」
小5の由里「(声張り気味)ねー!源じい!あたしが優勝したら、エアロパーツとアルミ ホイール、買ってくれるんだよね!」
源太郎「わかったわかった。だから二人とも、正々堂々と闘うんじゃぞ?」
小5の由里・響子「はーい!」
小5の響子「(声張り気味)ねえ!由里!」
小5の由里「(声張り気味)なに?響子?」
小5の響子「(声張り気味)わたし、絶対に負けないからねー!」
小5の由里「(声張り気味)あたしだって絶対の絶対に負けないよー!」
小5の響子「(声張り気味)わたしなんか絶対の絶対の絶対負けないんだから!」
小5の由里「(声張り気味)あたしは、絶対の絶対の絶対の絶対だよ!」
(SE)サーキット場。各車いっせいにスタートダッシュ!バババオオオオオオン!
源太郎「はやくスタートせんと、二人とも負けじゃぞ!」
小5の由里・響子「ああああああ!」
※回想シーン3おわり

源太郎「あのころの二人は本当に可愛かったの」
由里「ね、源じい?聞いてる?理恵だって年ごろなんだし、いろいろあるんだからさ!」
源太郎「残念じゃの。カマクラ教習所で、久しぶりに可愛い女の子に巡りあえたと 思ったにの」
由里「ね、ね、ここにもひとり可愛い女の子がいるよ!」
源太郎「(真剣に探してる)ど、どこじゃ?はよう教えんか!」
由里「ここよ!こ、こ!(SE)自分の胸を叩いてる。ポン!」
源太郎「近頃は、目も耳も悪うなっての。ほんに年は取りたくないもんじゃ。
おお、そうじゃ!すっかり忘れとった。可愛い植木たちに水をやらんと」
由里「なんにーーーーー!あたしは植木以下かい!」

(SE)教習コースの環境音。あたりを車が走る音。セミの声。
NA(皆本大祐)そうして、理恵ちゃんはようやく姿を現したのだった。
響子「じゃ、そろそろ時間だから、コースあと1周したら終わりにしましょう」
大祐「あ、あの響子さん?あれ、理恵ちゃんじゃないですか?」
響子「ほんとうだわ。じっとこっちを見てる。皆本くん、理恵のところまで 車まわしてくれる?」
大祐「はい!」
(SE)車の音。ブウウウウ。キキキッ。ドア開く音。ガチャ。
大祐「理恵ちゃん!」
響子「どうしたの?いつもの理恵らしくないよ?」
理恵「(思いつめたように)ね、響子さん!お願いがあるんだ!聞いてくれない?」

(シーンチェンジ、ロビーの環境音。由里と源じい)
源太郎「理恵ちゃんが恋煩いをの」
由里「だから、源じい、デートに誘ってる場合じゃないんだよ!元気づけてあげなく ちゃいけないんだから!」
(SE)由里のケータイの着信音。唱歌カマクラ。次の源太郎のセリフの背後で由里が電話にでる。ピッ。
由里「もしもし?あ、響子?」
源太郎「うむ。若いころはいろいろあるもんじゃて。それがこころの栄養になって、 強くたくましく成長するのじゃ。
(独白)それにしても北条由里は、昔のまんまじゃのう」

NA(朝比奈源太郎)あれは5年ほど前、わしの独り息子の通夜の晩じゃった。
※回想シーン4
(SE)ふすまを開ける音。和室に入る北条由里。
高1の由里「(声が硬い)こんばんは。北条由里です」
源太郎「おお?ひさしぶりじゃの。響子の同級生になったんじゃったかな?」
高1の由里「ずうっと親友だよ」
源太郎「ずいぶんと、おおきゅうなったの」
高1の由里「ありがと、源じい。ね、交通事故なんだって?」
源太郎「そうじゃ。トラックの酒気帯び運転じゃ。ひどい話じゃよ」
高1の由里「源じいはだいじょうぶ?」
源太郎「ショックは大きいがの。じゃが、わしより響子がの」
高1の由里「パパは永遠の恋人だっていってたのにね」
源太郎「もう、教官にはならないといっておる」
高1の由里「え?」
源太郎「なぐさめてやってくれるかの?」
高1の由里「うん」

(SE)木の階段を上る静かな足音。トントントン。由里が響子の部屋に入ってくる。
高1の由里「(ドアの向こうから声をかける)ね、響子。入るよ」
(SE)ドアの音。キイ。由里が静かにフローリングの部屋に入ってくる足音。
高1の由里「響子。ちょっと言葉が見つからないけど」
高1の響子「(すすり泣いている)」
高1の由里「(やさしく)響子!あたしだってお父さんもお母さんもいないんだよ!
ぐれてたころもあったけど、でもいつだって響子は明るくあたしを励まして くれたよね!」
高1の響子「(すすり泣いている)」
高1の由里「そうだ!ね、響子!これあげるからさ!」
高1の響子「(すすり泣いている)」
高1の由里「お母さんが、これ、あたしにくれたとき言ったんだ。ダイヤモンドは ずうっと輝きを失わない。
だから、お母さんだと思っていつまでも大切にしてね って」
高1の響子「(泣きながら)そんな大切なもの、もらえないよー」
高1の由里「大切だからあげるんだよ!響子は、あたしのともだちなんだからさ!
はじめて声をかけてもらったとき、すっごく嬉しかったんだよ!」
高1の響子「(すすり泣いている)」
高1の由里「ね、泣かないでよー。あたしまで悲しくなってくるからさー」
高1の響子「(すすり泣いている)」
高1の由里「響子、いつも言ってたじゃない!パパみたいな立派な教官になりたいって、
そして正しいドライバーを育てるんだって! だからちゃんと教官になってパパの分もがんばりなよ!」
高1の響子「(泣きながら)パパがいなくちゃなんの意味もないよー!」
高1の由里「なにいってんだよ!あたしはエフワンのレーサーになる! 響子は、教習所の教官になるって約束したじゃん!」
高1の響子「(泣きながら)もういいんだよー!由里にわたしの気持ちなんかわかんない よー」
高1の由里「ねー、教官になるってあんなに約束したじゃん!そのほうが響子のパパ だって絶対よろこんでくれるよー!」
高1の響子「(泣きながら)パパはもういないんだよー!ね、由里、もう帰って!」
高1の由里「響子!あたしたちずうっとともだちだからね!」
(SE)由里、響子の部屋から立ち去る。木の階段を下りる足音。

源太郎「ずっとあの調子じゃ。わるいの、由里。気にせんでくれるかの。
しばらくしたら、元気になるじゃろ。そのときはまた」
高1の由里「源じい?」
源太郎「なんじゃ?」
高1の由里「(決意)ね、源じいが知ってること全部教えて。あたしが教官になる!」
源太郎「急になにを言い出すんじゃ?おまえはレーサーになるんじゃろ?」
高1の由里「もう決めたんだ。あたし、響子の代わりにカマクラ教習所の教官になる!」
※ 回想シーン4おわり

( SE)教習所の環境音。
源太郎「由里は、なによりも、ともだちのことが大切なんじゃの」
由里「なに?源じい?」 源太郎「なあに、ちょっと昔のことを思い出しただけじゃ」
由里「源じい!あたし、ちょっと行ってくる!」
源太郎「ど、どこへ行くんじゃ?」
由里「理恵だよ!」

(SE)七里ガ浜の波の音。ザザー。ザザー。かもめの声。
NA(皆本大祐)理恵ちゃんが憧れているサーファーの安達くんは、まもなく、アメリカ留学のために、カマクラを去るらしい。
理恵ちゃんによれば、安達くんは、さっきまで、七里ガ浜で、名残惜しそうに最後の波に乗っていたのだが、
いよいよ出発の時間が近づいているのだ。
ぼくたち三人は、響子さんの教習車で江ノ島方面から国道134号に入り、海岸沿いを東に向かった。
左には道路に並行して江ノ電の線路が続いている。 残された時間は、ほとんどなかった。


響子「理恵、『カマクラ高校前』駅でいいのね?」
理恵「うん」
(SE)夕方の渋滞のため、なかなか車が進まない。波の音。ザザー。かもめの声。
大祐「渋滞がひどいですね。間に合うかな」
NA(皆本大祐)『カマクラ高校前』駅のホームは、国道134号に沿うようにして細長く伸びており、
車の中から駅の様子が見渡せる。

響子「やっとホームが見えてきた。 あ、ほら!あの男の子が安達くんじゃないかしら?」
大祐「(独白っぽく)理恵ちゃんの憧れのひとか。あの日に焼けてたくましい感じの」
(SE)江ノ電が、腰越方面(車の背後)から入ってくる。ガーーーーーー。
響子「理恵、さよならが言いたいんでしょう?」
理恵「うん」 大祐「あ!江ノ電が入ってきた!」
響子「ね!理恵!安達くん、わかる?」
理恵「(残念そうに)江ノ電の陰に隠れて見えない」
響子「この渋滞さえなければ」
(SE)江ノ電が止まる。キキキーー。プシュー。ドアが開く。閉まる。
大祐「(独白っぽく)あと少しなのに」
響子「もう間に合わない」
(SE)江ノ電が再び走り出す。ゴトンゴトン。ゴトンゴトン。ガーーーーー。

大祐「ああ、行っちゃう」
理恵「(ため息)はあ」

(SE)背後からだんだん大きくなるバイクのエンジン音。バオオオオオン! そして、三人の乗った教習車と並行して走る。
由里「(声張り気味)ねえ、理恵!」
大祐「ゆ、ゆりさん?」
響子「由里?」
理恵「(びっくり)由里!」
由里「乗りなよ!安達くんにさよなら言いたいんだろ!JRカマクラ駅に着く前に、 絶っっっ対、追いつくからさ」
理恵「(うれしい)由里!」
(SE)教習車のドア開く。ガチャ!閉まるバム!
由里「飛ばすからねー!しっかりつかまって!」
理恵「うん!」
(SE)由里のバイク、乱暴にクラッチをつないで急発進。
キュキュキュキュキュー! バオン!バオン!バオオオオオオオオオン!エンジン音、どんどん遠ざかる。


(SE)七里ガ浜の波の音。ザザーザザー。かもめの声。
大祐「あ、由里さんが戻ってきた」
響子「うふふ。ブイサイン出してる。理恵、無事に追いつけたみたいね。よかったわ!」
(SE)バイク近づく。バオオオン!キキキッ!止まる。
由里「ただいまー!」
響子「理恵は?」
由里「やっと、気持ちを伝える勇気が出たみたいだね。安達くんとカマクラの駅で 話してる。
あたしの出番は終わりって感じかな」
大祐「ああ、時間は多少、あったんですね。よかった」
響子「ほんと、わたしも理恵も、由里には元気づけてもらえるよね」
由里「あたしだって、響子や理恵にしょっちゅう励まされてるよ」

(エンディングBGM)
(SE)寄せては返す波の音。ザザーーー。ザザーーー。かもめの声。

響子「ねえ、由里、子供のころ、よくこの七里ガ浜で遊んだよね?」
由里「うん」
響子「砂浜に座って、なぞなぞ出しっこして遊んだの覚えてる?」
由里「覚えてるよ。響子のなぞなぞ難しいんだよねー!」
響子「うふふ。すっごい久しぶりだけど由里、ひとつなぞなぞ出すよ。いい?」
由里「どしたの響子?」
響子「すっごく身近にあるのにダイヤモンドのように貴重で、壊れやすいのに ダイヤモンドのように固くて、
そして永遠に輝きを失わないものはなーんだ?」
由里「なんだろ?ダイヤモンドのように永遠で、壊れやすいのに硬いもの?えーとねー。
(得意満面)あ、わかった!「さざれ石」でしょ!八幡宮にあるやつ!」
響子「うふふ。あははははは!」
由里「なあんで笑ってるのよー?」
響子「由里、わたし、由里のこと大好きだよ!」
由里「へ?なに?響子、あたしそっちの趣味ないからねー」
響子「ゆりー」 由里「皆本くーん!響子がへんだよー!助けてー!」

(第8話終わり)

【カマクラカルトクイズ8】
理恵「それでは、大変長らくお待たせいたしました!せーの!」
三人「カマクラカルトクイズー!ドンドン、パフパフー!」
理恵「カマクラカルトクイズも今回が最終回なんだってさ、つまんないのー」
由里「え?最終回ですって?」
響子「あら、『カマクララブ』最終回なの?なんか中途半端な感じがするわね」
由里「きっと打ち切りなのよ!」
理恵「あのねー『カマクララブ』本編は、まだまだ続くよ!最終回なのはカルトクイズだけだよ!」
響子「あ、そうなの。よかったわ。まだ皆本くん、第一段階も終了してないんだもの、かわいそうよね」
由里「あはははー。そうだよねー!もっと皆本くんにがんばってもらおーっと」

理恵「 それではさっそく最終回の問題は、今回のお話に出てきた江ノ電について。
江ノ電は、江ノ島駅からカマクラ駅までの区間、七里ガ浜、由比ガ浜の海岸に沿って走るわけだけど、
やっぱり駅名は、海にちなんだ名前が多いんだ。
さて、次の駅のうち、現在でもホームから海が見える駅はいくつある?

江ノ島、腰越、カマクラ高校前、七里ガ浜、稲村ガ崎、極楽寺、長谷、由比ガ浜、和田塚、カマクラ、
以上の駅の中から考えてみてくださいね!」
三人「それでは、また!いつかどこかでお会いしましょう!」


音声ドラマとシナリオは演出の都合上、一部変更されている場合があります。
(C)2000-2001 (K)

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