ライナーノーツにも書きましたが、MIDI POWERシリーズに取り組んでいた私達にとってこのPro2は、思いっきり大きな転機でありました。
それまでのMIDI POWERではキーワードは、
「元曲に忠実に!音を出来るだけ厚く!」
だったシリーズに、Proという言葉がアルバムタイトルに加わってターゲット音源が変わり、アレンジ要素が大きくフィーチャリングされた、その様変わりに当初かなり戸惑ったのが事実でした。
ある部分では従来のMIDI POWERのように「忠実に!」のほうが楽だったかもしれません。それは、お手本がありそれをナゾる事で成立する(ただしMIDI
POWERの場合はそれだけでは完成とは見なされませんでしたが・・・)ようなもの。「打ち込みテクニックを駆使する」という手法と、「忠実に!」という方向性が定まっていたので、その他の事を考えなくても作れたわけです。でもProのようにアレンジ要素が強くなると、まったく話が違ってきます。
ところで、「何故アレンジ要素が強くなったか?」
疑問に思う方々も多いと思います。私も大いに疑問に感じていましたが、考えるにその理由は以下のような事なのではないかと想像します。
1. ターゲット音源がSC-55からSC-88に進化して、発音数も増え表現力が非常に豊かになった。
2.表現力が豊かになった分、リアルな打ち込みで音源を使い倒そう!
3.リアルな打ち込みを十分に反映させたデータ作り・曲作りをやると曲の雰囲気・アレンジが相当変わってしまう。
故に結論が、「そしたら曲のアレンジを一からする!」だったのではないか?と推察する訳です。
さて、Pro2の制作当初は、いろんな事を手探り状態でやり始めました。
まず題材とする曲達には、それぞれ出典(何という、どういうゲームか?その世界観は?)があります。ですからその曲達を、「どういう方向にアレンジを持っていくか?」が最も注意を要するところです。
というのは、MIDI POWERシリーズを購入してくれる方々は、やはり「それぞれのゲームに対して思い入れを強く持っている方々ばかり」だと想像できますので、その方達がProを聴いて「こいつらこの曲をこんなにしやがって!」なんて思われるのが恐かった!!!
「へ〜〜ぇ、この曲、こういう解釈もあったんだ!」
と納得してもらえたり
「面白いアレンジしたね!」
と、面白がってもらえるようにするにはどうしたものか?相当悩みました。そういう意味で、「やりすぎ!ライン」が気になっていました。
さらに制作の質自体が、お手本があるのではなく「お手本を作る」作業になったとも言えます。従って
「出来上がりの線引きがものすごく難しい。作り込みをしようと思えばいつまででも手を掛けてしまう」
モノ作りにつきまとう、最後の難関が更に難しくなった感がありました。
「どこが完成か?妥協点を見出す難しさ」
です。
それが自分達が施したアレンジであれば、なおさら妥協したくない・・・。
「ラッキ〜ィ!」とライナーに書きながらも実はほぼ毎日のように”Boosty"南部・”Boot"黒岩と頭を抱え、腕組みしながら相談していた事を思い出します。
現在の様に「今回のアルバムコンセプトは?」なんて考えている余裕はまったくありませんでした。只ただプロデューサーの福武さんにアレンジした曲を聞いてもらい意見をうかがう、その繰り返しでした。
とにもかくにも
「リアルな演奏!上手い演奏!ギャラの高いミュージシャン・・・。」
そのために音色をシミュレート、奏法を、ミュージシャンを、サウンドを、そしてニュアンスをシミュレート・・・。
そんな試行錯誤をしながら出来上がったのが
「MIDI POWER Pro2〜沙羅蔓蛇2/ツインビー・ヤッホー!」
でした。
入江"Anythin'" 茂明
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