MIDI POWER Pro5 ライナーノーツ

いきなりですが、ごめんなさーい!

前略

 皆さん、お元気ですか?毎日の学校やお勤めご苦労様です。私どももお仕事とはいえ、ただいまアレンジデータ制作に苦労しています。

 書き出し早々で誠に恐縮ではございますが、まず一つ目のごめんなさいは、前回のお手紙(Pro4)の締めの言葉「草々」は、今回のように「前略」で始まったときに使う言葉であったコトをこの期に及んで見つけてしまいました。ごめんなさい。速やかに「敬具」と書き替えていただきたくお願い申し上げます。決して跡形が残らないように修正液と青のボールペンで念入りに丹念にとり行ってください。さもないと、「そんなジョーシキを知らんとは!、入江家末代までの恥さらし〜っ!!」と親類縁者一同から非難の雨嵐が...。

 そして二つ目のごめんなさいは、追伸で「次回Pro5は、コナミ名作シューティングゲームダイジェストみたいなものになるかも、との噂ですよ。」と書いたにも関わらずほとんどガセネタで終わってしまい、今回「SARAMANDA」単独になったことでございます。「当たらずしも遠からず」との思いやりを持っていて下されば「もったいなくも、ありがたき幸せ!」。お許し下さいますか?ホントは「グラディウス」や「XEXEX」あたりもMIDI POWER Proとしてやりたかったのですが...。
 今後のラインナップに是非ご期待下さい。

 さて、今回はアレンジ担当者が「制作現場の生の声」として、それぞれ打ち込みに対するコメントを喜んで(無理矢理?)書いてくれましたので、それらをご紹介いたします。

=南部“Bootsy”栄作=

 皆さん、おはようございます。MIDI POWERシリーズも早いもので今回でNo.5とあいなり、現在制作の真っ最中。「寝れない、ネタ無い、帰れない」と言ういつもの法則どおり、連日徹夜徹夜のなか、さらに追い打ちをかけるようにこの原稿を書いてくれとのお達し。「フッ修羅場にゃ慣れてるこの俺も、今回ばかりはちょっときついゼ...」なんてカッコつけても、誰も聞いてくれないし...、二郎さんになって「書きます!書きます!」と飛び跳ねてみても誰も見てくれないし、「え〜い!とりあえず書くだけ書こうホトトギス...」の状態でお送りする、題して「“Bootsy”の夜明けの打ち込み講座、只今5:27AM」。

 今回のお題は、かの名作「SARAMANDA」。その中からまずはオープニングを飾る「Power of Ange」を取り上げてみましょう。まずは皆様のお手元のシーケンスソフトにデータを読み込ませて再生してみましょう。上手く鳴りましたか?ギターのメロが聞こえん!という状態の方はMIDIのA、B両ポートが接続されているか確認して下さいね。
 それではTRACK12の4小節あたりオープンしてみましょう。ピッチベンドが幾何学模様で見られますが、これは私が開発した(そんな大袈裟なモンじゃないって)「ナスカの地上絵風ピッチベンド」です。これは私の愛用するシーケンスソフトRecomposer2.5Gの中のベンダーセットでランダム機能を使いSTEPとベンダー値を適当にグリグリ変えてかっこいい模様になったらリターン、という恐ろしく安易なワザですが、スペイシーなSE等には結構使えるワザの一つです。
 それからTRACK11の音がぐるぐると回って聞こえると思いますが、これは88Proのエフェクト「3Dを使用しています。現在は「SPEAKER」のセッティングになっていますが、これを「PHONES」に切り替えれば、ヘッドホンで再生したときにさらにぐるぐる回ります。

 では、本編の曲中ににまいりましょう。やはりメインはBポートの大半を占めるギター軍団ですが、なぜこんなにトラック数が多いのか?そう、ギターシンセを使っているんですね〜。フックの部分以外はほとんどリアルタイムで弾いています。ここでギターシンセをお使いでない方は、少々退屈な話題かもしれませんがお許しを...ということで、ギターシンセ使用している方はお判りかと思いますが、これを使って入力すると、大量のピッチベンド情報とともに、「ゴミデータ」がでます。美しいデータ作りを目指す人にとって、これは精神的に耐えられないものがあるかもしれませんが、そう!実はこの「ゴミデータ」がギター特有の(特に歪み系)ザワザワ感を醸し出す重要なファクターなのですネ!もちろん本当に入らないゴミもあるわけで、この辺を上手く処理していくのがコツではないでしょうか。ベンド値もゴミ同様で、全部整理して0にしまうと味気ないものになってしまいますので、その辺を頭に入れつつエディットをしましょう。ゴミは選別して出しましょうというルールがここでも重要になってくる訳ですネ。とは言うものの6TRACKもあるので、エディットは死ぬほど大変です。またチョコッといじるとあれもこれもとなり、最初にあった勢いやノリがどんどん無くなっていったりするコトもよくあるケースです。「気に入るまで何度も録って、どうしても気になるとこ手直しする」といったやり方が良い結果を生むように思われます。この辺は普通のレコーディングと同じですね。

 それから、エフェクターですが、これはメインのディストーションギターの音の上に薄くオーバードライブをかけています。これにより生っぽい臨場感が出るのですが、同時に浮いてしまうこともあるのでオケとのバランスを考えてMIXは慎重に行いました。
 こんな具合になかなか難しく奥深いものがありますが、しかし何だかんだいっても、「アーム使ってギュウィ〜ン!」なんて出来ちゃうのがギターシンセの醍醐味ですし、キーボードを使った打ち込みではなかなか浮かばないような発想が湧き出てくるのも楽しいものです。(因みに「Star Field」のギターソロは全部スライドギターでやってます。ナハハハハハ...)

 話はそれましたが、それではTRACK25当たりを見てみましょう。これはサイドギターですが、リアルタイムで取り込んでからプログラムチェンジで何種類かのギター音をアサインし直しています。これを単体で聞くと変に思われるかもしれませんが、オケ中で聴くとギター特有の「色気」みたいなものが出てきます。88Proでは特にギターの音色が豊富なので、部分的に違うタイプの音をチョコッと差し替えるだけでかなりリアルに聞こえてくるので、皆さんも是非研究してみて下さい。
 と言いつつ、なんかギター中心の話になってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?今回の「“Bootsy”の夜明けの打ち込み講座、只今7:10AM」、皆さんも腱鞘炎と睡眠不足には十分注意して明るい打ち込み道に精進して下さい。

=海老原“Ebi-chan”博=

 「Fly High」:普通のロック・フュージョン風シャッフル曲。ジャムセッション的なノリを表現しようとした。
 「Thunderbolt」:ストレートなハードロック。データの作成にあたっては、入力や奏法上シミュレートするためということでは、楽器はほとんど触っていない。別段こだわったわけではないが...。

 「Odysseus」:少しプログレがかったハードロックといった感じか。中間部分の変拍子も比較的分かり易いものと思う。尚、イントロ部分は“Boot”黒岩氏の手によるものである。
 全体としてはラフな感じに大きくノッたときのドライブ感みたいなものを出したかったのだが...。音が暴れた感じ、強気に攻めるプレイなどの表現はかなり難しいものがある。また、音源的にも同一メーカーの製品のみ、さらには一個のマルチティンバーのみとなると、全体の響きが意図しない部分で妙にまとまってしまうという点もある。雑音の類も表現しにくいということもあって、結果、スタジオミュージシャンがソツのない演奏をしたときのような、ロックとしては何とも迫力のないつまらない曲になってしまうことが多々ある。
 もちろん私自身の貧困な感性及び貧弱なデータ作成技術に起因するところが大きいことは、私自身も十分認識している。この「ラフなノリ」は今後の大きな課題の一つでもある。
 ともあれ、今の自分に可能な、自分なりの「Rock」を表現したつもりである。

 とまあ、クールを装う“Ebi-chan”(実際は、話をし始めると非常に饒舌なんですけど...意外と頑固なところもあります)や、見かけはちょっと恐そうだけど実はとっても繊細な神経の持ち主で非常に優しく真面目な“Bootsy”、それぞれいろんな所で苦心してアレンジやデータ制作をしているようですが、そうして出来上がってくるアレンジを聴くと、その人柄が如実に現れていたりします。
そんな感じするでしょ?曲を聴いての性格判断は、もしかしたら血液型性格判断より当たるかもしれませんネ。

 皆様方も恐らく、彼らのコメントと同じような苦労をされていると思いますが、データを参考にしていただき、今後も共に白髪の生えるまで(私と“Bootsy”は既にけっこう生えちゃっていますが...)頑張りましょう!

(コンドコソ間違えないゾ)草々

入江“Anythin' ”茂明

追伸
 この前“Ebi-chan”がヘッドホンをして打ち込みに励んでいる姿を見ました。それは、ザンバラ髪を振り乱して前後に頭を激しく動かしながら、時々「イエーッ!」と奇声を発しているではありませんか。それを見て唖然としている私が、いつも側で作業をしている“Boot”黒岩の方に目を向けてみると、彼も無言で「いつものことだよ」と言うようにうなずいていました。私は「真のハードロッカーの姿勢」を垣間みた気がしました。

USP